脳卒中と筋膜の関係
脳卒中後の状況においてよく「筋力が無い」、「持久力がない」からたくさんマシンをやればイイと思っている方も多いかと思います
しかし、実際には麻痺した手足が動くには筋肉自体の力強さも必要ですが
筋肉が十分に伸び縮みすることが大切になってきます
最大筋力が発揮するためには一番適した筋の長さが必要なのです
後遺症によって、手足が硬くなったり、だらんと緩んだ状態や同じ姿勢を取り続けることが多くなります
この状態が続くと、筋肉自体が伸び縮み出来なること以外にもう一つ
筋肉を覆う筋膜も伸び縮みできなくなります
この筋膜は「筋の長さを決定する」とも言われています
今回は脳卒中後に起こりうる筋膜の滑走障害について紹介します
筋肉と筋膜の関係
筋肉は一つ一つの繊維が束になった筋線維束が集まって一つの筋肉になります
筋肉は筋膜という薄い膜に包むように覆われています
筋膜は
・筋全体を覆っている筋外膜
・いくつかの筋線維を束ねて覆っている筋周膜
・筋線維1本1本を包む筋内膜
3種類に分けられます
みかんをイメージすると理解しやすいと思います
みかんを輪切りにすると一つ一つの部屋に別れています
これが筋肉を包む筋膜です
筋膜の役割
筋膜には様々な役割があります
・筋線維、筋線維束、筋を包み込み、互いの間に仕切りをつくり分けると同時に結びつけ、体の姿勢を保つ役割を持つ
・お互いの筋同士がこすれあうことで生じる摩擦から保護する
・筋線維を包み込むことで筋の動きを支え、力の伝達を行う
他にも筋膜によって筋肉は正しい形を保つことが出来ます
例えば、
椅子や床に座ったとき、お尻の形はつぶれて広がります
この時、お尻に体重が乗っても破けず、立ち上がると、つぶれて広がったお尻は元のお尻の形に戻ります
これが筋膜の働きによるものです
筋膜によって生じる問題
筋膜はコラーゲン線維で出来ています
コラーゲン線維といえば、お肌だと思います
皮膚(肌)は、表皮と真皮という層で構成されています
表皮は、水分の保持や体温の維持など、外側から体を守る役割があり、真皮は、表皮の内側で肌のハリや弾力を保ち、維持する役割があります
この真皮の約70%を構成している成分がコラーゲンと言われています
お肌に大切なコラーゲンですが、筋膜にとっては問題も生じてきます
上記の図は筋膜を構成するコラーゲン線維の配列になります
正常な筋膜ではきれいな配列になっていますが、異常がおきると筋膜を構成するコラーゲン線維が絡まってしまい伸び縮み出来なくなってしまいます
筋膜が硬くなると、中にある筋肉自体にも影響を及ぼします
みかんで例えるとこんな感じです↓
筋膜が柔軟に動くことで、中にある筋肉はスムースに動くことが出来ます
写真のように筋膜が肥厚すると筋膜は硬くなるり可動域が低下し、筋肉が硬直してコリや痛みが生じます
また、筋膜が硬くなると神経の圧迫などの症状を引き起こす可能性もあります
筋膜が肥厚する原因
筋膜が肥厚する原因はいくつかあります
・筋肉の使い過ぎ
筋肉の使い過ぎによって筋膜が水分を失って硬くなり、柔軟性を失った状態になります
・長時間同じ姿勢のまま動かない
長時間同じ姿勢のまま動かないことによって筋膜が硬くなり、周囲と癒着して炎症を起こすことで痛みを生じます
そのまま無理な運動を続けると、悪化して筋断裂や筋膜断裂などを発症することもまれにあるので注意が必要です
・ 体の歪みやねじれ
悪い姿勢や長時間の同じ姿勢を続けることで、筋膜の一部に成分が寄り集まり、ねじれや癒着が生じます
筋膜の中にある筋肉が圧迫されて動きにくくなります
・温度による影響
筋膜は温度の影響を受け、冷えると硬くなります
筋膜が硬い状態では、筋力トレーニングを行うことで逆に悪化する場合があります
硬く狭くなった筋膜の中で、筋肉は膨らんだり動いたりするわけですから摩擦が強くなり、結果、炎症を起こしてしまいます
これが滑走障害を引き起こす原因の一つです
筋膜を柔らかくする方法
筋膜が硬くなる多くの原因が、長時間の同じ姿勢です。つまり、定期的な運動が必要ということです
一日一回ではなく、午前と午後に分けて自分の身体の硬い部分、伸びにくい部分を感じとり、ゆっくりと呼吸しながらストレッチすると良いと思います
ほぐれるまでには時間を要するので無理せずに痛みを出さないようにしてゆっくりと伸ばしていきます
最初は20秒~30秒から始め、90秒以上行えるように慣らしてください
NHKの朝のラジオ体操はオススメです!
他には、ホームローラーを使った方法もオススメです
身体の硬い部分、伸びにくい部分にフォームローラーを当てます
身体の重みで当てた場所を圧迫しつつ、圧迫した部位に関連する関節を前後、左右に動かしながら解きほぐすように伸ばしていきます
これらの手順を圧迫する箇所につき1分程度行います
さいごに
麻痺した手足を鍛える事は大切ですが、その前にストレッチの時間を十分に取ることが最大の近道です
無理な筋力トレーニングは痛みの原因になりますので注意してください