リハビリテーションとは

近年、リハビリテーション、リハビリという言葉が普及してきており、街を歩けば病院や整体院でもリハビリという言葉を目にするようになりました。しかし、実際にはリハビリって何?って人がほとんどなのではないでしょうか?私自身もリハビリテーションの現場で作業療法士として働いていた身ではありますが、わけも分からずリハビリ学校に入学した一人です。(笑)今回は、リハビリテーションってどんな仕事なの?どんな資格が必要なのか?病院以外の働き口は?などを紹介していきます。

リハビリテ−ションの意味

リハビリテーション(rehabilitation)の語源は、
ラテン語でreは「再び」、habilisは「人間らしい」、「できる」という語で、「 再び人間らしく生きる」、「再びできるようにする」という意味になります。リハビリテーションという言葉は、現在われわれが使用している「障害者に対する機能回復、能力向上、社会復帰」というような意味になったのは、障害者が多発した戦争を契機とし、第一次世界大戦のころからで、第二次世界大戦後には広く定着していきました。

リハビリテーションの歴史

1963年 日本初のリハビリテーション学校の開設。(国立療養所東京病院附属リハビリテーション学校)

1965年 「理学療法士及び作業療法士法」制度

1988年 老人保健施設の誕生

2000年 介護保険制度の導入、回復期病棟(リハビリ専門病院)の新設

リハビリテーションの職種

リハビリテーションとは「再び人間らしく生きる」、「再びできるようにする」といった意味であり、それに必要な活動の全てを現した言葉になります。「再び人間らしくいきる=リハビリテーション」のために理学療法を行う理学療法士、作業療法を行う作業療法士、言語療法を行う言語聴覚士がいます。

リハビリテーションといってもの様々な職種が関わっています。
日本のリハビリテーションとは医師の指示の下に行われるものとなっています。そのため医師の指示がなければリハビリテーションを提供できません。医師の指示を受け、看護師が体調管理、管理栄養士が栄養面のサポート、介護士がセルフケアの援助、ソーシャルワーカー(ケアマネージャー・社会福祉士)による介護・福祉、医療の相談を行います。主にリハビリを行う職種としては理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3つです。その他に義足や装具を作成する義肢装具士も関わってきます。

ちなみに、

説明したように日本では医師の指示の下でしかリハビリを行うことができないため、リハビリだけでは開業することはできません。しかし、海外でのリハビリテーションは医師の処方がなくても行う事ができ、クリニックなどを開業することが可能です。

理学療法士(Physical Therapist:PT)

理学療法士(PT)

理学療法士はPTとも呼ばれています。ケガや病気などで身体に障害のある人に対して、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法(温熱、電気等の物理的手段を治療目的に利用するもの)などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する専門職です。

日本理学療法士協会のページリンク

つまり、寝て、起きて、歩くなど人の基本的な動きの改善に特化した職業です。

関節可動域訓練、筋力強化訓練、運動麻痺の回復、痛みの軽減など問題となる部分への直接アプローチする治療法から、動作練習、歩行練習など動作能力の向上を目指す治療法など駆使して生活の自立を支援する仕事です。

働き場所

  • 大学病院
  • 総合病院
  • リハビリ病院
  • 介護、福祉関連施設(訪問リハビリ、通所リハビリ、障害福祉(児童)施設など)
  • スポーツ関連施設(フィットネス、プロチームなど)
  • 保健所、行政機関(リハビリ教室、福祉支援課など)
  • 一般企業(ハウスメーカー、製造業など)

作業療法士(Occupational therapist:OT)

作業療法士(OT)

作業療法士はOTとも呼ばれています。ケガや病気などで身体に障害のある人に対して、生活で必要となる「食事」「洗顔」「料理」「字を書く」などの生活動作や、就学・就労といった社会的適応能力を維持・改善し、「その人らしい」生活の獲得を目的に、リハビリテーションを行う専門職です。
また、身体機能だけでなく精神機能へのリハビリを行うこともあり、精神科の病院などで働く作業療法士も多いことが特徴です。

日本作業療法士協会のページリンク

治療手段としては、作業、仕事、日常生活動作、レクリエーションなどが用いられます。作業療法の歴史から、身体障害作業療法と精神科作業療法とに分けることが行われます。精神科作業療法の歴史は非常に古く、作業が運動や遊戯や音楽などといっしょに精神病の治療法として用いられています。

理学療法士が寝る、起きる、歩くなど、人の基本的な動きのリハビリを行うスペシャリストなら、作業療法士は「箸を持つ」「服を着る」「手を洗う」などその人らしいの生活が送れる動き、心のリハビリを行うスペシャリストです。

働き場所

  • 大学病院
  • 総合病院
  • リハビリ病院
  • 介護、福祉関連施設(訪問リハビリ、通所リハビリ、障害福祉(児童)施設など)
  • 精神科病院
  • 職業訓練施設

言語聴覚士(Speech Language Hearing Therapist:ST)

言語聴覚士(ST)

言語聴覚士はSTとも呼ばれています。言葉によるコミュニケーション(言語、聴覚、発声・発音、認知など)は様々な機能が関係していますが、病気や交通事故、発達上の問題などでこのような機能が損なわれることがあります。言語聴覚士は言葉によるコミュニケーションに問題がある方に専門的サービスを提供し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門職です。また、摂食・嚥下といった食事に関する問題を専門的に見る事が多いのが特徴です。

日本言語聴覚士協会のページリンク

理学療法士は基本的な動きの改善を図り、

作業療法士は生活動作の動きと心の改善を図り、

言語聴覚士がコミュケーションや食事に必要な口の動きの改善を図ります。

三つのリハビリ専門職スタッフが人が社会生活を送る上で大切な活動をサポートしていきます。

働き場所

  • 大学病院
  • 総合病院
  • リハビリ病院
  • 介護、福祉関連施設(訪問リハビリ、通所リハビリ、障害福祉(児童)施設など)
  • 特別支援学校

義肢装具士(Prosthetist and Orthotist:PO)

技師装具士(PO)

義肢装具士は(PO)とも呼ばれています。麻痺や怪我によって手足がうまく動かない方に対して、医師の処方に従い患者様の採型や採寸を行い、これを元に義肢装具を製作する専門職です。
患者様一人ひとりに適した義肢装具をデザインするため、患者様はもちろん、他のメディカルスタッフとも情報共有を密にするのが特徴です。

日本義肢装具士協会のページリンク

義肢装具士は、主に民間企業である義肢装具製作事業所に所属しています。事業所と提携している病院・リハビリテーション施設では、多くのメディカルスタッフと連携し、チーム医療を実践しています。

義肢装具士は、モノづくりのプロフェッショナルという側面があります。患者様の身体をギプス等で型をとり、その型をもとに義肢装具を製作します。金属、プラスチック、皮革、繊維材料など多種多様な材料を、大型の工作機械や手工具で加工する技術が要求されます。患者様が快適に過ごせるように、不具合があれば原因を突き止め、調整を繰り返し、最終的に適合した義肢装具を提供します。

義肢装具士の活躍の場は、障害を持つ人のスポーツやレクリエーションのサポート、途上国などの国際支援活動など、多岐にわたります。

働き場所

  • 民間の義肢装具製作所
  • リハビリテーション施設
  • 病院
  • スポーツ現場への帯同
  • 発展途上国などの国際支援

リハビリの対象疾患

  • 脳血管疾患
    • 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脳外傷、脳炎、低酸素脳症等、神経疾患:多発性神経炎(ギラン・バレー症候群等)、多発性硬化症、神経筋疾患、末梢神経炎、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症)、遺伝性運動感覚ニューロパチー、末梢神経障害、皮膚筋炎、多発性筋炎。 失語症、失認及び失行症、高次脳機能障害など
  • 運動器疾患・外傷
    • 大腿骨近位部骨折 変形性関節症 脊柱管狭窄症 圧迫骨折 腱板断裂、切断など 
  • 脊髄損傷
    • 頚椎症 後縦靱帯骨化症など
  • 呼吸器疾患
    • 急性発症した呼吸器疾患の患者:肺炎、無気肺等のもの。胸部外傷、肺梗塞、肺移植手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管支喘息、気管支拡張症、間質性肺炎など
  • 心疾患
    • 心筋梗塞 狭心症、開心術後、大動脈解離、解離性大動脈瘤、慢性心不全など
  • 小児疾患
    • 脳性麻痺、脳形成不全、小頭症、水頭症、奇形症候症、二分脊椎等、先天性切断、先天性多発性関節拘縮症等、先天性神経代謝異常症、大脳白質変性症、先天性又は進行性の神経筋疾患:脊髄小脳変性症、シャルコーマリートゥース病、言語障害、聴覚障害、認知障害を伴う自閉症等の発達障害:広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害、学習障害など
  • 難病疾患
    • ベーチェット病、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、スモン、筋萎縮性側索硬化症、強皮症、皮膚筋炎および多発性筋炎、結節性動脈硬化症、ビュルガー病、脊髄小脳変性症、悪性関節リウマチ、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病)、アミロイドーシス、後縦靭帯骨化症、ハンチントン病、もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)、ウェゲナー肉芽腫症、多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)、広範脊柱管狭窄症、特発性大腿骨頭壊死症、混合性結合組織病、プリオン病、ギラン・バレー症候群、黄色靭帯骨化症、シェーグレン症候群、成人発症スチル病、関節リウマチなど

制度

リハビリテーションはリハビリができる対象疾患が決まっており、リハビリが受けられる期限(疾患別標準算定日数)も決まっています。医療保険で受けられるリハビリテーションの期限は、脳血管疾患では180日、運動器疾患では150日、心大疾患では150日、廃用症候群では120日、呼吸器疾患では90日となります。期限を超えた場合は、介護保険でのリハビリへの移行となります。しかし、治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合は医療保険でのリハビリテーションを継続して行う事が可能です。

リハビリテーションの入院から退院までの流れ

上記図のように医療保険と介護保険でのリハビリでは役割が大きく異なります。

医療保険でのリハビリは自宅生活に向けたリハビリが主となります。

介護保険でのリハビリは身体機能の維持が主となります。

受けられるリハビリ時間にも大きく差があります。

連携(カンファレンス)

リハビリテーションは理学療法士、作業療法士など独自に患者様の方向性を検討するわけではありません。

定期的に医師や看護師、社会福祉士や管理栄養士などの医療・保健スタッフと連携して今後のリハビリテーションの内容、退院先や介護サービスの検討を行っています。

リハビリテーションでのカンファレンス

主なカンファレンスの内容として

  • 現状の身体機能、将来的な身体機能、生活能力について
  • 病棟生活の様子(服薬の管理、トイレや更衣といったセルフケアなど)
  • 栄養状態
  • 退院後の介助者や介護サービスの必要性、金銭面
  • 人によっては車の運転や就労関連
  • 退院先の自宅環境など

患者様の状態、生活様式、家族環境によって話し合う内容は異なりますが、様々の職種が情報共有を行い自宅生活に向けて検討していきます。

リハビリテーションの未来

高齢化や生活習慣病の増加により2020年には患者数が300万人を超えたとされる脳血管疾患。その半数以上は後遺症が残ってしまうため、リハビリが必要とされています。しかし、リハビリテーションには期限が設けられているため、退院後もしっかりとリハビリを受けたいという「リハビリ難民」の患者様が増えています。

この波を受けて、保険外のリハビリ(自費リハビリ)サービスの需要が増え、都市部では自費リハビリ施設も増えてきています。

まとめ

今回は、皆様にリハビリテーションについて知って頂きたく紹介しました。高齢者社会に伴って、リハビリの需要は年々増えてきています。病気や怪我で後遺症に悩まれている方に関しては、退院してリハビリがなくなることで不安に感じることも多いかと思います。一人で抱え込まず、まずは、かかりつけの病院や地域の相談窓口に相談することをオススメします。